こんにちは。
暑かった夏も終わり、次第に涼しい日が増えてきました。
夏の思い出と言えば、そう、エアコンが効きまくって寒いくらいの家電量販店ですね。
というわけで今回は家電量販店が関わるような分析手法についてご紹介します。

1.ビニングを活用していない分析
2.ビニングを活用した分析
3.ビニングによって導かれるマーケティング戦略
4.注意点
5.まとめ

顧客データからお客さんの実態を捉え、次なるマーケティング戦略を考えよう、となったとき、どのようにデータを見ればよいでしょうか。
例えば、購買回数の平均値を計算したり、購買金額の平均値を計算したりしてデータをまとめ、特徴を捉えやすくすることが考えられますよね。
しかし、お店の特徴によっては、ただ平均値などの統計量を計算するだけでは、顧客の実態を捉えられないこともあるのです。

例えば、家電量販店の顧客データとして以下があったとします。

ここで累計来店回数の平均値は13.5回、平均購買金額は183,700円、1回あたりの平均購買金額は13,600円となります。
この計算だけを見ると、このお店では高額な商品が売れやすい傾向があるように見えます。
また、1回あたりの平均購買金額は13,600円なので、安価な商品はあまり買われていないか、まとめ買いをされることが多いのかもしれない、という印象を受けます。
高単価な商品をもっと売り出して、より売上を上げていこう、というような戦略を立てようと思ってしまうかもしれません。

しかし、元のデータをもう一度よく見てみてください。
累計購買金額には、数十万円もの大きな開きがあるのがわかります。
家電量販店には、電源タップのような数百円程度の商品から、精密機械のような数十万円の商品まであり、商品の値幅が大きいため、このようなデータとなるのはある意味自然なことかもしれません。
ただ、これを純粋な平均で分析してしまうのは、大雑把な感じがしますよね。

では、このような場合にどう分析するのが良いでしょうか。
他の数値より極めて高い、いわゆる外れ値がある場合、外れ値が平均を大きく引っ張ってしまうので、外れ値を除外して平均を計算する、というような分析手法は、聞いたことがある方も多いかもしれません。
ただ今回の場合だと、合計購買金額が数十万円というお客さんも、逆に数万円というお客さんも一定数いるため、外れ値と呼べるものはありません。

ここで試すべきなのが、ビニングという分析手法です。
ビニングとは、データをある閾値を使って複数の集合(ビン)に分け、別々に分析する手法のことで、一つ一つのデータをいくつかのビン容器に入れてまとめる様子をイメージして名付けられました。

今回は、顧客データを合計購買金額が5万円未満の低額帯と5万円以上の高額帯に分け、それぞれに統計量を計算して分析してみます。
まず低額帯にあたるのは、下記顧客データです。

累計来店回数の平均値は15.5回、平均購買金額は26,750円、1回あたりの平均購買金額は1,726円となります。

一方の高額帯は以下の通り。

累計来店回数の平均値は12.2回、平均購買金額は288,333円、1回あたりの平均購買金額は23,699円となります。

こうして算出した統計量を比べてみてまず目を引くのが、1回あたりの平均購買金額が、低額帯1,726円に対し高額帯23,699円と、大きな開きがあること。
高額帯のお客さんの方が、一度に購買する金額も圧倒的に高いということがわかります。
次に、累計来店回数の平均値を見てください。
通常、来店回数が多いほど、合計購買金額も高くなるのが一般的です。
しかしこのお店では、高額帯のお客さんの方が来店回数が少ないという、逆転現象が起きているのがわかります。

こうして低額帯と高額帯に分けてデータを見てみると、このお店には、「来店回数が多いが1回あたりの購買金額は小さい」お客さんと「来店回数は少ないが1回あたりの購買金額が大きい」お客さんという、2種類の顧客がいそうなことがわかります。
前者は電源コードや乾電池などの安価な商品を購入するために来てくれている人、後者は大型家電や精密機械を購入するために来てくれている人かもしれませんね。

このように顧客像が見えてきたことで、以下のようなマーケティング戦略を立てることができるようになります。

  • 低額帯へのアプローチ

来店頻度の向上:ポイントや小額購入時の割引クーポンを活用して、さらなる来店を促進。
クロスセルの強化:ついで買いを促すために、関連商品やセット販売の提案を行う。

  • 高額帯へのアプローチ

限定キャンペーンの実施:高額帯顧客には特別なキャンペーンやVIP向けのイベントを提供し、特別感を演出。
パーソナライズされたサポート:購入後のアフターサービスやメンテナンスの提案など、顧客満足度の向上を図る。

こうして、ビニングによってより効果的なマーケティング戦略を立てられるになりましたが、ビニングを行う上での注意点として、以下のようなものがあります。

  • 適切なビンの数を設定すること

今回は単純な例としてビンの数を2つにしましたが、ビンの数は任意に設定することができます。
例えば家電量販店には、数百円の商品と数十万円の商品だけではなく、ケトルなどの数千円の電化製品を頻繁に購入する人や、家電本体はネットで買い、数千円の部品だけ店舗で購入するような人もいるかもしれません。
中程度の金額帯のビンを加えて3つのビンにすることも考えられます。
一方で、ビンの数が多すぎると、顧客の全体像が見えにくくなり、かえって分析しにくくなることもあります。

  • 適切な閾値を設定すること

元のデータを見ると、顧客IDがCの人は、20回来店して50,000円購買、Jの人は30回来店して60,000円購買なので、1回あたりの購買金額が低く、低額帯のお客さんに近い特徴を持っていることがわかります。
しかし、今回は閾値を5万円としたため、上記2名のお客さんは高額帯に分類されています。
より正確に顧客像を捉えるには、閾値を10万円などにした方が良いかもしれませんね。

今回はビニングについて紹介しました。
商品価格の値幅が大きい顕著な例として家電量販店の例を用いましたが、ここまで値幅がなくとも、ビニングをすることでより顧客の実態を捉えやすくなることがあります。
より適切な手法を用いて、データを分析するようにしましょう。

弊社medeluでは、このようなデータ分析も活用しながら、コンサルティングを行っています。 
どうぞお気軽にご相談ください。

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