「ロイヤルティプログラムって、結局どこまで効果があるの?」——正直、こう聞かれると答えに詰まることがありますよね。ポイント制度や会員ランクは多くの企業がやっていますが、「成功している」と胸を張って言える事例は意外と少ない気がします。
ロイヤルティ関連のソフトウェアベンダーAntavoが公開したGlobal Customer Loyalty Report 2026によると、成果を測定している運営企業の9割が「ROIはプラス」と回答し、平均ROIは5.3倍だったそうです。運営企業の満足度も83.0%と、前年の69.2%から大きく伸びています。適切に設計・運用すれば、ロイヤルティプログラムはしっかりと数字で返ってくるもの——そう言えそうです。
今回は、実際に数字を公開している国内外の事例を3つ取り上げながら、「成功している」と言えるプログラムに共通しているものを考えてみます。
スターバックス:モバイル注文と会員証を一体化させた
スターバックス コーヒー ジャパンの会員プログラム「Starbucks Rewards」は、2017年9月のスタートから3年で会員数620万人を突破しました(2020年の公式発表)。その後も成長は続き、2025年3月の制度刷新時点では、2017年の提供開始時から約10倍に増えた約1,500万人(公式発表)、そして2026年9月にはついに会員数2,000万人を突破しています(報道)。
背景にあるのは、モバイルオーダー&ペイをはじめとする「会員証機能」と「購入体験」の一体化です。2026年9月には、本会員登録を済ませなくてもアプリをダウンロードするだけですぐにモバイルオーダーを使い始められる「アプリ仮会員」機能も始まりました。スマホで事前注文・決済まで完結する仕組みが整うほど、会員証を持つ理由がはっきりする——ポイントを貯めるためだけの会員証ではなく、日々の買い物を便利にする手段として定着し、2017年の開始から2026年現在までの9年間にわたって会員数を伸ばし続けている例だと感じています。
無印良品:ポイントの使い道を「社会的な価値」まで広げた
良品計画のスマートフォンアプリ「MUJI passport」は、2025年9月に「MUJIアプリ」へとリニューアルされ、同時に会員・ポイントプログラムも「MUJI GOOD PROGRAM」へと刷新されました。業界メディアの報道によると、リニューアル発表時点でアプリの年間アクティブユーザーは1,569万人にのぼります。
このリニューアルで興味深いのは、買い物やチェックインで貯まるポイントの使い道を、店舗・オンラインでの買い物だけでなく、地域の活動支援や寄付にまで広げた点です。ポイントを「値引きの原資」としてだけでなく、「自分の行動が社会とつながる手段」として位置づけ直した、と言えそうです。ロイヤルティプログラムの進化の方向性として、以前の記事(2026年のロイヤルティプログラム新潮流)でも触れた「ポイント付与から関係育成へ」という流れを、規模の大きい企業が実際に形にした例だと思います。
セフォラ:会員ランクとゲーム感覚のイベントで「熱量」を引き出す
海外の例では、化粧品小売のセフォラが展開する「Beauty Insider」も参考になります。会員数は北米だけで約4,500万人(複数の業界メディアの報道によれば2025〜2026年時点)にのぼり、無料の「Insider」、年間350ドル以上購入の「VIB」、年間1,000ドル以上購入する最上位ランク「Rouge」という3段階のランク制度があります。
このRouge会員だけを対象にした体験イベント「Rouge Celebration」は2024年に初開催され、翌2025年の第2回では、前年(初開催時)比で2桁の売上成長を記録し、平均注文額(AOV、客単価)も40%以上伸びたと報じられています。また、達成ごとにポイントがもらえる「チャレンジ」企画では、最初の2つの企画をきっかけに新規入会した会員が200万人を超えたそうです。ランクを上げることそのものがゲームのように楽しめる設計になっている点が、熱量の高い会員を生み出しているように見えます。
3つの事例に共通していること
数字の規模や業種はバラバラですが、並べてみると共通点が見えてきます。
- ポイントや割引だけでなく、「購入体験そのもの」や「ポイントの使い道」を広げている
- 会員ランクやイベントなど、続ける・参加すること自体が楽しくなる仕掛けがある
- 会員数・AOV・ROIといった具体的な指標として成果が現れており、事業成長に直結している
逆に言えば、「ポイントを付与して終わり」の制度は、今の消費者にはあまり響かなくなってきているのかもしれません。私自身、クライアントのCRM設計を考えるときも、「ポイント還元率」の話だけで終わらせず、体験や使い道の広がりまで含めて設計することを意識するようにしています。
まとめ
- ロイヤルティプログラムは、きちんと設計すれば平均ROI5.3倍という調査結果もあるほど、投資対効果が出やすい施策です
- スターバックスは購入体験との一体化、無印良品はポイントの使い道の拡張、セフォラはランク制とゲーム感覚のイベントで、それぞれ会員の熱量を引き出しています
- 共通するのは「ポイントを配って終わり」にせず、体験や参加の仕掛けまで設計している点です
自社のロイヤルティ施策を見直す際は、前回の記事「2026年のロイヤルティプログラム新潮流」もあわせてご覧ください。
参考資料
- Global Customer Loyalty Report 2026 – Antavo(ROI・満足度の数値の出典)
- スターバックスのロイヤルティプログラム「Starbucks(R) Rewards」が3周年に – デジタルPR(2020年、620万人会員の出典)
- 「Starbucks(R) Rewards」プログラム内容を一部刷新 – デジタルPR(2025年、約1,500万人会員の出典)
- スターバックス リワード2,000万会員達成 – Payment Navi(2026年、2,000万人会員突破・アプリ仮会員の出典)
- 無印良品アプリが全面リニューアル – FASHIONSNAP.COM(リニューアル概要・アクティブユーザー数の出典)
- Sephora Loyalty Program: How Beauty Insider Built the Gold Standard in Customer Retention – Joy(会員数・Rouge Celebration・チャレンジ企画の数値の出典。Glossy/Sephora Newsroom/BeautyMatter発の数値を集約した二次情報のため、一部数値に表記ゆれあり)

