2026年のロイヤルティプログラム新潮流:「ポイント付与」から「顧客との関係育成」への転換

長年、ロイヤルティプログラムといえば「購入金額に応じてポイントを付与する」仕組みが主流でした。しかし2026年、その前提が大きく揺らいでいます。国内外の調査・事例が示すのは、購買だけでなく、来店やアプリ利用、レビュー投稿、コミュニティ参加といった「購買と購買の間」にある顧客行動まで評価し、長期的な関係を育てる仕組みへの転換です。

目次

1. ロイヤルティプログラムに訪れた転換点
2. 「購買と購買の間」にある行動をどう評価するか
3. 世界の消費者データが示す進化の方向性
4. 実例に見るロイヤルティプログラムの再設計
5. まとめ:2026年に求められる視点

1. ロイヤルティプログラムに訪れた転換点

単純な販促施策からの脱却

Zeta Global Japan(旧チーターデジタル)が公開した「ロイヤルティプログラム トレンドブック2026」は、国内ロイヤルティプログラムの実態を継続的に調査したレポートです。2022年の初版では国内55社のプログラムを7類型に分類していましたが、2025年版では新たに選定した国内53社を分析し、「ポイント付与中心」から「ブランド体験や顧客接点を重視する仕組み」への変化を明らかにしました。

同レポートが指摘する最大の変化は、来店、アプリ利用、レビュー投稿、イベント参加、コミュニティ活動、リサイクルといった、購買以外の多様な行動を評価の対象に組み込むプログラムが増えている点です。

CRMの再定義

この流れは、CRM(顧客関係管理)の捉え方そのものの見直しにもつながっています。購買データの管理にとどまらず、「顧客にブランドを思い出してもらえる場面」や「顧客との結びつき」を育てる投資として、CRMを再整理する動きが広がっているのです。

2. 「購買と購買の間」にある行動をどう評価するか

Zeta Global Japanのトレンドブックは、顧客成長パスとカテゴリー想起理論という2つの理論的フレームワークを用いて、購買と購買の「間」にある行動の価値を分析しています。これらの行動は単なる付帯的な接点ではなく、ブランド想起を増やし、顧客との結びつきを維持・強化する重要な機会だと位置づけられています。

具体的には、100を超える行動パターンを以下の3つの意図から分類しています。

• 減衰防止:離脱の兆候がある顧客との関係を途切れさせない行動
• 結びつき強化:既存の関係をより強固にする行動
• 新しいきっかけの創出:新たな関与のきっかけを生み出す行動

さらに顧客との関係を4段階で捉え、段階ごとに評価すべき行動が異なることも解説されています。画一的な「購入額に応じたポイント付与」では見えてこなかった、顧客との関係の深さに応じた設計が求められているということです。

3. 世界の消費者データが示す進化の方向性

「モノ」より「体験」、そして感情的なつながりへ

Euromonitorの調査(2022年実施)では、消費者の59%が自分の好みに合わせた選び抜かれた体験を求めており、48%がモノよりも体験にお金を使うことを好むと回答しています。消費者全体の34%が没入型のバーチャル空間で他者と交流することに興味を示しており、デジタル上でのエンゲージメントのあり方も変化しています。Z世代に限ると65%以上がInstagramやTikTokに1日複数回アクセスしているというデータもあります。同調査では、消費者の25%が「エンゲージド・ロイヤリスト」と呼べる積極的な支持層に分類されるとしています。

同調査はロイヤルティプログラムの進化の方向性として、(1) 金銭的メリットと感謝のメッセージを組み合わせた情緒的なつながり、(2) NFTやブロックチェーン、暗号資産などのデジタル技術の活用、(3) 複数ブランド間の連携や社会的責任の統合による多次元的な体験、の3点を挙げています。

4つの戦略的優先事項

Mintelの消費者調査レポートは、時代遅れのロイヤルティプログラムが顧客を遠ざけるリスクを指摘した上で、ブランドが優先すべき4つの戦略を挙げています。

• 価値主導型ロイヤルティ:ポイント制度を超えて、キャッシュバックや送料無料など「今この瞬間に意味を感じられる」特典を優先する
• ハイパー・パーソナライゼーション:AIと購買データを活用し、顧客ごとにカスタマイズされた特典で「理解されている」という感覚を生み出す
• 感情的・体験的エンゲージメント:限定コミュニティ特典や先行アクセス、社会貢献型の取り組みを通じて、取引を超えた結びつきを構築する
• パートナーシップ戦略:他企業との協業により、コストを抑えながらプログラムの価値と多様性を拡大する

経済的な不確実性が続く時代だからこそ、「顧客が感謝され、理解されている」と実感できる設計が、長期的な競争優位性につながるというのがこの調査の結論です。

4. 実例に見るロイヤルティプログラムの再設計

ホテル業界:ステータス体系の精緻化と動的な判定方式への移行

国内の動きとして、JR東日本ホテルズ・JR東海ホテルズ・JR西日本ホテルズ・JR九州グループホテルが共同運営する会員プログラム「JRホテルメンバーズ」が、2026年11月10日に制度をリニューアルします。公式サイトのFAQによれば、新制度は「Bronze」「Silver」「Gold」「Platinum」「Diamond」の5段階ステータス制に移行し、判定方式も毎月25日時点の直近12ヶ月の獲得ポイントに基づく「ローリング方式」に切り替わります。新しいステータスは翌月1日から適用される仕組みです。ステータス到達時にはボーナスポイント(シルバー到達で500ポイント、ゴールド到達で3,000ポイントなど)も付与されます。

ポイント還元率そのものの変更幅については、公式FAQ上に具体的なパーセンテージの明記が見当たらなかったため、本稿では踏み込んだ言及を避けます。段階を細かく刻み、年1回の一括判定から毎月のローリング判定に切り替えることで、会員が「次のステータス」を常に意識し続けられる設計になっている点が特徴です。

共通する設計思想

Zeta Global Japanのトレンドブックが紹介する国内12事例や、JRホテルメンバーズの事例に共通するのは、「一律の特典」から「会員の状態や行動に応じて変化する特典」への移行です。購買額だけでなく、利用頻度や関係の深さを多面的に評価する設計が、2026年のロイヤルティプログラムの主流になりつつあります。

まとめ:2026年に求められる視点

2026年のロイヤルティプログラムに共通する方向性を整理すると、次の4点に集約されます。

1. 行動評価の多様化:購買以外の行動(来店、アプリ利用、コミュニティ参加など)を評価に組み込む
2. 関係段階に応じた設計:顧客との関係の深さに応じて、評価すべき行動や提供すべき価値を変える
3. 感情的・体験的価値の重視:金銭的メリットだけでなく、「理解されている」「感謝されている」という実感を提供する
4. 動的な仕組みへの移行:年次の一括判定から、継続的に見直される動的な評価・還元設計へ

ポイント付与という「入口」の設計だけでなく、顧客との関係がどう深まっていくかという「全体の設計図」を描けるかどうかが、2026年以降のロイヤルティマーケティングの成否を分けそうです。

自社のロイヤルティプログラムが購買以外の行動や顧客との関係段階をどこまで捉えられているか、一度棚卸ししてみてはいかがでしょうか。medeluでは、企業のマーケティングチームと一緒に、ロイヤルティプログラムの設計・見直しをサポートしています。お気軽にご相談ください。

国内外企業のロイヤルティプログラム事例については、国内外企業のロイヤリティプログラムの事例紹介でも紹介しています。あわせてご参照ください。

参考資料

Zeta Global Japan:ロイヤルティプログラムの新潮流を読み解く「トレンドブック2026」を公開
Euromonitor:新しいロイヤリティ(loyalty)プログラムの形とは
Mintel:Building loyalty that connects: strategic priorities for brands
JRホテルメンバーズ公式:2026年リニューアルFAQ